2024年度 ACYアーティスト・フェローシップ助成 申請を締め切りました。
沢山のご申請ありがとうございました。
一次選考の結果は、一次選考通過者にのみ2024年5月9日までに電子メールにて連絡します。
一次選考:書類選考
二次選考:面談選考(開催日:2024年5月18日 午後)※オンライン会議システムでの実施を予定
※面談選考は、展覧会や公演の本番などのやむを得ない場合を除き、原則ご参加ください。
なお、選考結果は、採択・不採択に関わらず、2024年5月下旬ごろ、すべての申請者に電子メールにてご連絡します。
2023年度 ACYアーティスト・フェローシップ助成 活動報告書を公開いたします。
BUKATSUDO×アーツコミッション・ヨコハマ共同企画として2023年度より新たに始まった、視察交流体験プログラム「令和の横浜使節団」。まちづくり・デザイン・ものづくり・食文化等をテーマに、横浜の人々が他都市のヒト・コト・ハコ(場所・街)についてリアルな訪問と交流の中で学び、感じたものを横浜に持ち帰る旅をするプログラムです。
名前の由来は、1871年に横浜港から出航した岩倉具視を全権大使とする「岩倉使節団」。諸外国の優れた文化や技術を待つのではなく、自ら出向き学び、持ち帰った彼らの志、そして旅立ちを支えた横浜の文化・背景を継承するべく、横浜の造船ドック跡地・BUKATSUDO発の学びの旅を企画していただきました。
2023年8月31日-9月1日に第1回を実施。訪問先は新潟です。開港五都市という共通点の他、BUKATSUDOと同じく株式会社リビタが運営するシェアスペース「MOYORe:」があることによって決定しました。
アーツコミッション・ヨコハマは、横浜からの使節団員の募集を担当。今回は、横浜で活動する建築家、コミュニティマネージャー、大学教員、保育事業者、ライター、行政職員など8名、また信州アーツカウンシルから1名が参加してくださいました。
旅のコーディネーターはMOYORe:の原田智子さんと、新潟と横浜の二拠点で活動する建築家の大沢雄城さん。お二人のご案内のもと、新潟市、五泉市で活躍する地域を面白くするプレイヤーのところへ訪れました。
1日目/新潟市街地のまちづくりの様子を視察
新潟駅から「にいがた2km」のエリア(東大通〜弁天町〜本町〜古町)を実際に歩きながら、各所でクリエイティブな取り組みをされている方のお話を直接伺いました。
使節団メンバーは、JR新潟駅直結の商業施設「CoCoLo 南館」1Fにあるレンタルスペース、ワークラウンジを併設したシェアスペースMOYORe:に集合。
新潟市役所の稲葉一樹さんから、新潟市街地のまちづくりの歴史のレクチャー。その後、現在ご担当されている、「にいがた2km」の取り組みについてお話を伺いました。にいがた2㎞、即ち新潟駅―万代―古町をつなぐ都心軸約2㎞のエリアに、魅力的な人・モノ・情報を集積し、クリエイティブな人が活躍できる都市にすることで、市全体で都市の活力と住民福祉の向上の好循環を作ることを目指す様々な取り組みが行われているそうです。
にいがた2km
お話をうかがいながら実際ににいがた2kmエリアを歩き、WORKWITH本町に移動。
WORKWITH本町にテナント入居している株式会社新潟家守舎の小林 紘大さんから、本町8番町と坂内小路からなる8BANエリアでのエリアリノベーション活動について伺いました。8BANPARKの運営方法、担い手・参加者の輪を広げる仕組みや、広報の工夫のお話から、マーケットの開催がエリアの特性を活かしながら価値を高め、人とまちの繋がりも深めていることを教えていただきました。
8 BAN Renovation | Area Renovation Project
その後、上古町の百年長屋SANに移動。
合同会社アレコレの迫一成さんから、ご自身のこれまでのデザイン、ブランディングの仕事の話と、hickory03travelersの取り組みについて、また上古町の百年長屋SAN副館長の金澤李花子さんからSANの活動についてお話を伺いました。特に地域の伝統菓子のリブランディングとカフェでの展開、自ら組合に参加しまち全体と関わりながら行う上古町商店街リブランディングなど、デザイン・店舗運営・開発流通の3つの柱で地域とともにあるクリエイティブな事例をご紹介いただきました。
上古町の百年長屋SAN
hickory03travelers
2日目/五泉市で産業を軸とした場づくりの取り組みを視察
日本有数のニットの生産地である五泉。糸の染色から製品の完成までワンストップで行っている五泉ニットは、名だたるハイブランドのOEMを担いつつ、近年ではODM、自社ブランドプロデュースを展開するなど、国内外から高い支持を得ています。
五泉市で活動する建築家 ・塚野琢也さん(塚野建築設計事務所)に、ご自身が手がけた3施設をご案内頂き、五泉ニットのブランディング事例を見学しました。
最初に、五泉ニット地域ブランド化事業によって誕生したニットの複合拠点Loop&Loopを視察。五泉ニット工業協同組合の事務所機能を持つ建物を、ショップ・カフェ・イベントホール・コワーキングスペース等の機能を加えながらリノベーションし「着る・寛ぐ・楽しむ・集う・働く」の5つの要素をクロスさせた空間をつくられたそうです。
Loop&Loop
次に、ウメダニットの山田香織さんご案内のもと、工場と直営ショップthe knit barを見学。歴史ある工場の中で紡がれる丁寧な工程を見た後、縫製力・デザイン性の高い上質なニットを手に取り購入することができる、特別な「ニット体験」の機会となりました。
the knit bar
最後に、高橋ニット自社製品発信のための複合施設Mile Stoneを見学。生産工場に隣接した倉庫をリノベーションした、自社ブランド製品の開発研究、そして発信のための複合施設です。展示販売空間、ECサイト販売用の撮影・在庫管理・梱包空間を備えており、製品を様々な形で「届ける」ための場所として運営されているそうです。
Mile Stone
振り返り/新潟での学びから横浜を振り返る
10月3日に「令和の横浜使節団・新潟編を振り返る会」をBUKATSUDOにて開催。使節団が集い、新潟の方にもオンラインでつながりました。
大沢さんには旅全体の振り返りを、使節団メンバーで神奈川大学建築学部准教授の上野正也さんには、都市形成・構造から見いだせる二都市の共通点と文化背景の違い、新潟のひと・まちを参考に横浜が目指す姿の提案をお話しいただきました。
使節団メンバーからは、新潟の取り組みはとても勉強になり面白い機会であった、自身の横浜での取り組みを客観的にみるきっかけにもなった、という感想が多数寄せられました。新潟の旅を通して得た出会いや学び、それぞれのフィールドと結びつけた新たなアイディアなど活発な意見交換が行われました。
新潟の方からは、自身の活動をプレイヤーの方から客観的に評価をしてもらえたことが良かった、他地域のプレイヤーと共通言語で語ることができてよかった、という感想をいただきました。使節団の訪問が、訪問先にとっても良い効果をもたらすことができたようです。
各々にとって収穫・学びの多い時間となった「令和の横浜使節団」第1回新潟編。使節団絶賛の面白い人・まちづくりに出会える新潟へ、皆様もぜひおとずれてみてください。
文・写真:アーツコミッション・ヨコハマ
#プロジェクト
#産業・商品
#まちづくり
#デザイン
#ACY
2019年度アーティストフェローの額田大志さんらによるプログラムが、横浜トリエンナーレを記念して横浜マリンタワーにて展開されます。
サウンド/映像インスタレーション 「シャトル」
音楽:額田大志
映像:高良真剣
声:ermhoi
会期:2024 年3月15日(金)~6月9日(日)18:00~21:30最終入場
会場:横浜マリンタワー 展望フロア
企画協力:アーツコミッション・ヨコハマ
https://marinetower.yokohama/events/202403071019/
https://www.yokohamatriennale.jp/2024/many-many-arts/3088
2023年度アーティスト・フェローユニ・ホン・シャープさんが東京都現代美術館で開催される「翻訳できない わたしの言葉」に出品します。
〇ユニ・ホン・シャープ/展覧会出品
「翻訳できない わたしの言葉」
会期:2024年4月18日(木)~7月7日(日)
会場:東京都現代美術館
翻訳できない わたしの言葉
新横浜駅近くの旧横浜篠原郵便局を活用した文化交流拠点「ARUNŌ(アルノー) -Yokohama Shinohara-」2022年8月にオープンした同所は、篠原町を複数拠点で活性化していくための布石でもある。運営するウミネコアーキ代表の若林拓哉さんに、その経緯と展望を伺った。
さまざまなコンテンツが同居する複合拠点
JR横浜線・横浜市営地下鉄の新横浜駅から、繁華街とは反対の篠原口に出て約5分。静かな住宅街の表通りを歩くと、右手にキッチンカーとスロープ付きの建物が見える。
ドアの上の赤いサインには、「ARUNŌ」の文字。地域の要の位置にある空き建物を改修して文化複合拠点とする、ウミネコアーキの事業の第1号店だ。
入り口には近隣の農家直送の野菜や生花が並べられ、カウンターには地ビールや地域の飲食店 から仕入れた食材を利用した軽食メニュー。奥の壁は、手作りのアクセサリーや地域の企業の調味料、ハーブティー、駄菓子などの商品が窓型の棚に置かれた「一窓貸し」スペースとなっている。
さらに奥の部屋は、仕事やミーティングのできるシェアラウンジ。壁をはさんで裏側には、シェアハウスが2部屋ある。
篠原地域をエリアリノベーション
もともとこの篠原エリアの出身で、大学生時代に一度離れて戻ってきた若林さん。家族が持つ不動産を将来的に扱うことになるだろうと宅地建物取引士の資格を取ったものの、当初は特に地域のために何かやりたいと考えていたわけではなかったという。
代々この土地に暮らしてきた若林さんが地域の交流拠点を作るきっかけとなったのは、若林さんの祖父が1967年に建てた「新横浜食料品センター」の存在だった。
現在のアルノーから徒歩5分ほどの場所にある新横浜食料品センターは、新幹線開通から3年後、エリアに越してくる人が増え始めたタイミングで、新しい住人たちが住みやすい街にするにはどうしたら良いかと考えて作られた。肉や魚、野菜、乳製品、生活雑貨などを扱う6店舗が1階に、その店主らが住まう8世帯分の住居が2階にある長屋形式の木賃アパートで、築年数が経ってきたことから数年前から建て替えも検討していた。しかし一部のテナントが営業継続を希望していることから、若林さんは大胆な更新計画を立てた。
「せっかく使ってくれている方がいるので、営業しながら更新するために建物を縦半分に切って、まずは営業を続けたい方がいる側を残します。もう半分に新築を建ててから引っ越してもらい、残っていた方をまるごとリノベーションするという計画を今進めています」
新横浜食料品センターの延床面積は全体で600平方メートル以上あるが、一つひとつの店舗は20〜40平方メートルほどと小さく、その一角を若林さんの事務所にすると決めたものの手狭だった。
「でも、床面積を増やしてしまうと収支が回らないし、ほかの人の関わりしろを考えてもそんなに大きくできない。そんなときに、この近辺には意外と空き家があるなと気づいて。センター内だけでがんばるのではなく、周辺の地域資源を活用してエリアリノベーションしていったほうが、やりたいことが本当にできるんじゃないかなと考えたんです」
かつての郵便局を再び地域のハブに
そんなタイミングで出会ったのが、不動産のコンサルティングを手がける山本ルリさん。新横浜食料品センターについて問い合わせてきた山本さんに、若林さんは早速、空き物件を探して持ち主に交渉する業務を依頼した。徐々に情報網を広げ、横浜篠原郵便局が空くこともいち早く知った。
民間のオーナーが国に貸す形で1975年から郵便局として営業していたこの建物は、2021年に駅前に新しくできたビルに郵便局が移転し空き家に。オーナーから取り壊しの話もあったが、「ここは鉄骨がむき出しで、ふつうこんな収め方怖くてできないなというすごく特徴的な建物ですが、産業遺構的なニュアンスもある建築なんだなとわかったんです。そういうものを壊して駐車場やアパートにしてしまうのは非常にもったいないなと思って」と、建築に対する愛着から若林さん自ら、会社で一棟全体を借り上げ運用することを決めた。
シェアスペースとしての業態は、後から発想したものだという。「地主の方も地域に愛着があるし、まちの中心にある公共的な場所だったところを誰かが独占的に使うというよりは、地域のために使うのが一番ナチュラルだと考えました。なるべく細分化していって関わりしろを増やして、ほかの人が挑戦できるような場所にするのが良いんじゃないかと。地域のために何かこういうことをやりたいんだというよりは、たまたま郵便局だったからこうしたんです」
フラっと寄れて、挑戦できる場所
シェアキッチンでは、韓国料理やビストロが定期的に出店するほか、前出の山本さんがマネジメントする「フローズンカフェバー」が営業している。経営を安定させるために自動販売機を導入しようというアイデアから生まれた業態で、市内の近隣エリアの飲食店から仕入れた冷凍食品を自動販売機で販売することも、温めて提供することもできる。また、急速冷凍機を導入し、地域のフードロスを削減しようと自ら冷凍食品の開発にも取り組んでいる。
35枠ある一窓貸しの「マドグチ」も、固定収入を確保しながらたくさんの人に関わってもらう仕組みの一つ。一面まるまる空いている壁にあったギャラリー利用の料金案内は、「考えてなかったんですが、『展示もできるんですか』と聞かれてその場で相場を調べて作りました」と若林さん。「こういうことをやりたいんだけどできますかと聞かれたら、なるべくどうやったらうまくできるか全力で考えたい」と、どこまでもフレキシブルだ。
地域の人からの反応を訊ねると、「単純に帰り道が明るくなって安心できると言われて、やっている意味があったなと思えました。言ってもらって嬉しかったのは、『何もなくてもフラっと来やすい』という言葉ですね。はじめはどういう場所なのかわかりづらくても、知ってくるとちょくちょく寄ってくれるんです」。もともと馴染みのある土地ではあるが、こうして拠点を開くことで「人生の先輩にたくさん会えるようになりました」とも語る。「母校の何回りか上の先輩が利用者として来てくれるようになったり、『大丈夫?食べてる?』と心配してくれる“お母さん”が増えたり。関わる人の層が広がりました」
アルノーで営業経験を積んだ人、いいなと思った人を、新横浜食料品センターに引き抜きたいという算段もある。「企画の入り口は基本的に受動的 だけれど、流されながら結果的に自分のやりたい方向にうまく誘導していっているのかもしれないですね」。出会う人や環境を最大限に活かしながら、大きなビジョンを着実に形にしていく若林さん。篠原エリアの今後に注目したい。
文:齊藤真菜
撮影:大野隆介
【プロフィール】
若林 拓哉(ワカバヤシ タクヤ)
株式会社ウミネコアーキ代表取締役・つばめ舎建築設計パートナー。
1991年神奈川県横浜市生まれ。2016年芝浦工業大学大学院修了。同年よりフリーランスとして活動開始。2022年法人化。建築設計だけでなく企画・不動産・運営の視点からトータルデザインし、建築の社会的価値を再考する。主なPJに、「新横浜食料品センター」(SDレビュー2022入選)、旧郵便局を改修した地域の文化複合拠点「ARUNŌ –Yokohama Shinohara-」(2022年)、主著に『小商い建築、まちを動かす!』(2022年、ユウブックス)等。
山本ルリ(ヤマモト ルリ)
株式会社Gee.RS 代表・一般社団法人musubi代表理事
1974年神奈川県横浜市生まれ。大学卒業後、不動産建売業を営む父親の会社で経理や会計、財務金融機関の担当。また、経営者としての知識を得る。
父親の他界をきっかけに、自身の会社を設立。柔軟な発想と多角的な視点、様々な経験と粘り強く考え尽くす姿勢から、不動産活用のプランニングにとどまらず、そこに関わる家族の相続や信託、介護、税など日常生活のサポートを請け負ってきた経験を活かし、お客様への伴走サポートのプラットフォームとして、2022年より一般社団法人musubiを設立する。
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